今回の記事では賃貸の「敷金礼金なし」物件の特徴とメリット・デメリットをご紹介します。
「敷金礼金なし」とは?
「敷金礼金なし」とは、入居時に「敷金」や「礼金」が不要な物件のことをいいます。
少しおさらいになりますが「敷金」は大家さんに預けておくお金のため、使われることが無ければ返金されます。
しかし、家賃滞納をしてしまった場合や、経年劣化以外で破損があった場合などには敷金から必要な費用が引かれることになります。
最近では通常に使用していても「退去時にはルームクリーニング代を敷金から差し引く」とする契約が多くみられます。
また「礼金」は戦後の住宅難の時代に大家さんへお礼として支払われていた慣習的なものであり、返金はありません。
地域や時期により差はありますが、敷金・礼金はどちらも家賃の1ヶ月分~2ヶ月分必要になることが一般的です。
「敷金礼金なし」は敷金・礼金がないので、借主からすると入居時の初期費用が安くなります。
敷金礼金なしの理由を理解する
賃貸物件は1990年代までは敷金礼金は合計3か月~4か月という募集条件が多く見受けられましたが2000年代に入り敷金礼金は各1か月として募集される物件が増加しました。
2010年になると「ゼロゼロ物件」といわれる敷金礼金は不要とする物件が増加しました。
しかし、2020年6月1日 不動産検索サイトHOME’Sより東京23区内を検索してみると
“物件掲載数:121,983件”に対して“ゼロゼロ物件:14,202件”のみでした。 ※約11.6%
このように賃貸住宅の敷金礼金は減少傾向にあるものの、都心ではまだまだ敷金礼金を必要とする物件の方が多い状況にあります。
お部屋探しをする際に気を付けて頂きたいのは敷金礼金が必要な物件が多い中「なぜその物件はゼロゼロ物件」なのかということです。
初期費用の負担を減らして空室期間を短くしたい大家さん
大家さんとしては、敷金礼金はできれば受け取りたいのが本音です。
しかし、空室期間が長いのは困りものです。
敷金礼金を数か月分受け取れても空室期間がそれ以上となればマイナスになります。
敷金礼金なしであれば初期費用を抑えられる分、周辺の物件と差別化できるので入居者が早く見つかると考えて「ゼロゼロ物件」にすることがあります。
このような理由であれば借り手側にとってはお得な物件といえます。
初期費用をお得にして家賃を高くしたい大家さん
大家さんの中には賃貸市場をよく勉強されている人もいます。
敷金礼金が減少傾向にある現状ではその波に乗った方が借り手はつきやすいと考えるのです。
しかし、そのような大家さんでもどんどん値下げするような賃貸経営をする人はいません。勉強されている大家さんほど自己の利益を追求しながら、借り手にとっても借りやすい条件を考えているものです。
そこで敷金礼金なしにするかわりに、家賃を相場より少し高く設定します。
こうすることで借主は初期費用を安く抑えることができて、大家さんにとっては毎月の家賃が少し多く入るようにしているのです。
このような理由による「ゼロゼロ物件」は2~3年住もうとする場合には借主にとってはお得となります。
デメリットとしては長い年数居住してしまうと家賃が割高な分総額は高くつくことがあることです。
初期費用をお得にする分長く住んでほしい大家さん
既述したように大家さんが賃貸経営をするにあたり避けたいのは長期の空室期間です。
当たり前ですが1か月空室となれば1か月分の収入がなくなります。これが3か月、4か月、半年と続くようでは経営が成り立たない大家さんもいます。
このような大家さんは入居者に長く住んでもらうことを強く望むため、家賃を相場にあわせたまま初期費用も抑えているので借り手にとってはお得な物件といえます。
注意点としては1~2年以内の短期間で退去するときには違約金がかかることがあるので契約内容をしっかり確認しましょう。
初期費用をお得にしないと借り手がつかない物件
家賃や初期費用は
- エリア
- 物件そのもの
- 環境
によって違いがあります。
「1.エリア」については人気沿線や都心に近いと家賃は高くなりますし、敷金礼金も必要となる物件が増えます。逆に相場の安い沿線や都心から離れると家賃は下がり、敷金礼金なしも増える傾向にあります。
「2.物件そのもの」とは“極小の間取り”や“あまりにも古い物件”、“建物や室内に何かしらの問題がある”など借り手がつきにくい物件です。
「3.環境」は“陽当りが非常に悪い”、“線路沿いで酷い騒音”、“近隣に悪影響を感じる施設がある”などエリアや物件には問題ないけど環境に問題がある場合です。
このような物件は一般的には借り手がつきにくいので、敷金礼金なしの条件で募集されやすくなります。
例えば、線路沿いでうるさいけど許容できる人にとっては、他の条件が好印象だったお部屋が「ゼロゼロ物件」だった場合はお得な条件になります。
このように敷金礼金なしの理由が“物件”や“環境”にあってもそれを許容できる人にとってはお得な物件となります。
しかし費用面のお得さだけを考えて、デメリットを無理に許容するのではなくそのお部屋で毎日生活することを考えて後悔のないように検討しましょう。
初期費用が安いエリアの物件
前項で記述しましたが人気沿線や都心に近いと家賃は高く、敷金礼金は必要とされやすくなります。都内であっても人気の低い沿線やエリアであれば家賃は下がり、敷金礼金なしの物件割合が増加します。
元々都心近くに住む必要がない人にはエリアによっては好条件の物件でも「ゼロゼロ物件」が見つかりやすくなります。
敷金礼金なしは退去時の費用はどうなる?
賃貸契約条件ではほとんどの物件が退去時のクリーニング代を借主負担としています。
敷金を預け入れている場合は退去後にクリーニング代を差し引かれて返金分があれば差額を返金されます。
では、敷金なしの場合のクリーニング代はどうなるのでしょう?
敷金礼金なしの多くはクリーニング代を別途請求されます。請求されるタイミングは契約時か退去時のどちらかです。
クリーニング代はお部屋の広さによって変わりますし、物件によっても差異があるので一概に言えませんが、1Rや1Kであれば25,000円~35,000円位です。エアコン洗浄も借主負担とする契約の場合は1台につき1万円前後がプラスされます。
クリーニング代を契約時に支払っている場合は退去時に故意過失がなければ他に請求されることはありません。
しかし、契約時に支払っていない場合は退去時にどのくらいの費用がかかるのかを理解しておく必要があります。
契約内容をしっかりと確認するようにしましょう。
まとめ
今回は賃貸市場において増加傾向にある「敷金礼金なし(ゼロゼロ物件)」について解説しました。
この記事で理解していただきたいのは「敷金礼金なし」は増加傾向とはいえ都内ではまだまだ敷金礼金を必要とする物件が圧倒的に多いのが現状ということです。
そして、敷金礼金なしにしている物件にはいくつかの理由があり、多くの理由は借り手がつきにくいエリアや、一般的に避けられてしまう物件です。
また家賃を相場よりも高く設定されている場合もあります。
敷金礼金だけに気を取られずに物件や環境、家賃相場を鑑みて検討するようにしましょう。